抗動脈硬化作用を有する血中の高密度リポタンパク質の主要なアポリポタンパク質であるApo A-Iのアスコルビン酸(AsA)欠乏時における減少機構を解明することを目的とした。そしてこの解析により抗動脈硬化因子としてのAsAの生理機能を明らかにできると考えた。実験には遺伝的AsA合成不能ラット(ODS-od/odラット)を用いた。 1、AsA欠乏時には肝臓においてApo A-I mRNAレベルが対照群の50%に低下していた。そしてこの低下はApo A-I遺伝子の転写速度の変化によって起こっているものではないことが示唆された。小腸もApo A-Iの主要な産生臓器であるが、小腸におけるApo A-I mRNAレベルに変化は観察されなかった。 2、AsA欠乏によるApo A-I遺伝子の発現の低下の機構を解明するために、肝臓の他のmRNAのレベルを調べたところ、アルブミンmRNAレベルは80%に、ハプトグロビンmRNAレベルは2倍に、α_1-酸性糖タンパク質mRNAレベルは4倍にAsA欠乏により変化していた。これらはすべて我々の研究による新たな知見である。 3、前項での4種のmRNAレベルをAsA欠乏時に変化させている因子として、まずグルココルチコイドを想定して副腎摘出ラットを用いて実験を行ったが、否定的な結果を得た。そこでこれら4種のmRNAレベルのAsA欠乏時の変化が、急性期や炎症時に引き起こされることに着目した。急性期や炎症時にこれらの変化を引き起こすメディエーターとしてIL-1、TNFα、IL-6やTGFβがあげられる。現在、AsA欠乏時におけるこれらの因子の血中濃度の上昇について検討中である。
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