脂肪組織は、以前は代謝的に全く不活発であり、ただ単に単純拡散で浸透してきた脂肪酸をトリグリセリドの形で蓄積するものと考えられてきたが、近年になり脂肪組織は代謝的に極めて活発であり、特に生体のエネルギーバランスの上で重要な生理的役割を果たしていることが明らかとなってきている。すなわち、生体は食事由来のエネルギー源を待ちかまえて、極めて迅速に処理蓄積しさらに必要に応じて生体に再供給するシステムを具備している。食事性炭水化物も食事性脂肪と同じく脂肪として体内に蓄積されるが、前者はインスリンなどのホルモンによって極めて強く制御されている。一方、食事性脂肪の場合にはそのようないわば内因性因子の介在は全く知られておらず脂肪、特にそれから派生する脂肪酸が直接シグナルとなる制御機構の存在が強く推察される。本研究の当該年度における研究実績は以下のようである。 脂肪酸と作用様式が極めて類似していることが推察され、その受容体が核内転写因子として極めて重要な役割を果たしていることが明らかになってきているステロイド・甲状腺ホルモンスーパーファミリーの脂肪細胞での発現に着目し、遺伝子レベルでの解析を行った。その結果、レチノイン酸受容体およびビタミンD受容体mRNAが脂肪細胞において発現し、脂肪細胞の分化と密接に関係していることが推察された。また、ラット脂肪組織より脂肪細胞膜上に局在する脂肪酸結合タンパク質cDNAの取得にも成功した。
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