研究概要 |
(1)脂肪酸受容体のクローニングと遺伝子及びタンパク質の発現動態の解析 脂肪酸自体が、リガンドすなわちシグナルとなり直接的に標的遺伝子に作用し、転写レベルでの制御を行うことが推察されてきた。このような細胞内へのシグナルの移行は、特に脂肪酸のような脂溶性かつ細胞毒性の強い物質の場合、特異的な受容体タンパクと結合したのちになされることが想定される。そこで、脂肪酸吸収の最も盛んな小腸上皮細胞においてそのような脂肪酸受容体タンパクが存在するかどうかを検討した。その結果、ラット小腸上皮細胞に新規の脂肪酸結合タンパク質遺伝子の発現が認められた。この現象はタンパクレベルでも確認できたことから、本遺伝子の構造ならびに発現動態などの詳細な解析を行っている。 (2)脂溶性物質をリガンドとする核内転写因子遺伝子の解析 近年、脂溶性物質をリガンドとする核内転写因子は、各転写因子間でリガンドによって相互作用を受ける、いわゆるクロストーク現象が見出されてきている。そこで脂肪細胞で発現が顕著であったレチノイン酸受容体(RAR,RXR)ならびにビタミンD受容体(VDR)の遺伝子発現を詳細に検討したところ、両受容体遺伝子ともかなり脂肪細胞特異的な発現を呈すること、さらに興味深いことにクロストーク現象も認められることが判明した。これらのクロストーク現象によって、脂溶性ビタミンによる脂肪細胞分化抑制が生じることが推察された。さらに、マウス由来の3T3-L1脂肪細胞cDNAライブラリーからVDRをクローニングし、マウスVDRのアミノ酸配列を初めて決定した。
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