加熱タンパク質の形成するゲルのネットワークの分子構造を知るために、ネットワークを構成する、個々の分子の構造を知ることが必要である。これまで熱変性したタンパク質は凝集してゲルを形成するために正確な分子構造の解析が困難であった。今回単量体で存在する熱変性分子の取得を試み、これに成功し、変性分子の構造解析を行った。 モデルタンパク質として卵白アルブミンを用いた。タンパク質の高次構造変化は、Ellman法によるSH基の定量、CDスペクトルおよび分子表面の疎水性により評価した。GroELはプラスミドpKY206で大腸菌を形質転換して得た。 低イオン強度下において低濃度の卵白アルブミン溶液を短時間80℃加熱することにより、ゲル濾過分析により会合していない単量体の熱変性分子が得られた。この分子の2次構造は保持されているが3次構造は大きく壊されており、分子内部の疎水性領域が露出していた。またこの分子は適当な温度で加温することにより元と同じnataiveな構造に巻き戻ることを明らかにした。 以上の結果から、熱変性したタンパク分子は完全に変性したランダム構造をとっているのではなく、モルテングロビュール様構造を有しており、この構造がネットワークの形成に役立っているものと結論された
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