動物細胞において、生合成された新生ポリペプチド鎖のうち間違った構造が形成されて正常な機能を欠いたタンパク質は生命維持のために危険であり、小胞体内で分解されることが示されつつある。著者はこの分解を司ると考えられる全く新しいタイプのシステインプロテアーゼを、ラット肝臓の小胞体から世界に先駆けて単離することに成功した。ER-60プロテアーゼ及びER-72プロテアーゼと命名したこれらのシステインプロテアーゼの活性中心とその性質を分子レベルで解析することを目的に研究を行い、以下の研究実績を挙げた。 1.ER-60プロテアーゼとER-72プロテアーゼの性質を解析し、これらが他の既知のシステインプロテアーゼとは異なる特異な性質を有することを見いだした。 2.ラット及びヒト由来の培養細胞から単離したmRNAからcDNAライブラリーを作製し、ヒト及びラットER-60プロテアーゼのcDNAをクローニングした。さらにそれらの全塩基配列を決定した。 3.クローニングしたcDNAクローンから発現ベクターを構築し、組み替え型ラット及びヒトER-60プロテアーゼの大腸菌での大量発現系を確立した。 4.3.により得られたタンパク質の結晶化を試み、いくつかの結晶化条件を見いだした。
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