研究課題/領域番号 |
05660141
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
横田 一成 島根大学, 農学部, 助教授 (90158361)
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研究分担者 |
地阪 光生 島根大学, 農学部, 助手 (60243424)
滝波 弘一 島根大学, 農学部, 教授 (40243422)
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キーワード | エイコサノイド / アラキドン酸 / 細胞情報伝達機構 / Madin-Darbyイヌ腎臓細胞株 / 必須脂肪酸 / 膜リン脂質 / ホスファチジルエタノールアミン / プロスタグランジン |
研究概要 |
1.動物培養細胞株を用いた膜リン脂質の改造反応経路の解析:栄養成分で必須脂肪酸のアラキドン酸(AA)からエイコサノイドへの生合成経路、すなわちAAカスケードでは、食品より摂取された系列の異なる必須脂肪酸が細胞内で種々の代謝レベルで相互作用している。その新機能性を細胞と分子のレベルで解析するのに有用な培養動物細胞株を用いた。今回、細胞情報伝達機構の中心的役割を果たすプロテインキナーゼCの活性化物質に良く応答するMadin-Darbyイヌ腎臓細胞(MDCK)株を実験材料とした。n-6系列、またはn-3系列必須脂肪酸の各々とウシ血清アルブミンとの複合体を調製した。これらの個々を、またはn-6とn-3不飽和脂肪酸との等モル複合体をMDCK細胞株の培養液に添加して2日間培養を行い、細胞膜リン脂質を修飾して改造した。種の高度不飽和脂肪酸の細胞への取り込みの代謝の特異性と系列の違う必須脂肪酸の相互作用について多くの知見が得られた。そのうち、膜リン脂質のAAレベルに注目すると、AAレベルはn-6系列必須脂肪酸により著しく増加し、特にホスファチジルエタノールアミンで顕著であった。この膜リン脂質のAAレベルと、本細胞株の細胞応答に伴うプロスタグランジン(PG)生合成とは密接に関連しており、AAレベルの増加に伴ってPGE_2の生合成が促進された。n-6系列のリノール酸は膜リン脂質のAAレベルを高め、それはAAによる修飾に匹敵するほど効果的であった。しかし、リノール酸にn-3系列必須脂肪酸を等モルづつ添加すると、膜リン脂質のAAレベルの増加は完全に阻害された。AAにn-3系列の必須脂肪酸を添加してもAAレベルの増加は抑制されなかった。このことより、n-3系列不飽和脂肪酸はリノール酸からのAAへの不飽和化、伸長反応を阻害し、膜リン脂質へのアシル化反応には影響しないものと考えられた。膜リン脂質の修飾に伴う膜物性や細胞応答で産生されるPGを介した細胞機能の変化を検討した。その結果、ある種のn-3系列脂肪酸による細胞膜の修飾で細胞増殖の促進が見い出された。現在、さらにPG_1やPG_3の生合成と関連する必須脂肪酸の細胞内相互作用について検討している。 2.アラキドン酸カスケード関連酵素の活性発現調節機構:さらに、特定の必須脂肪酸でMDCK細胞株を修飾し、PG生合成の律速酵素のシクロオキゲナーゼに対する特異抗体を用いた目的の酵素蛋白質レベルの測定と、2種類の酵素アイソフォームのcDNAプローブを用いた遺伝子発現の調節に関する研究を現在、進行中である。
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