研究概要 |
遺伝子工学的手法によりリゾチームのC-末端に疎水ペプチドを挿入し、グラム陰性菌に対する抗菌性を有するリゾチームを作成することを目的とした.前年度は疎水ペプチドPhe-Phe-Val-Ala-ProをコードするDNAをリゾチームcDNAのC-末端に挿入し、酵母発現ベクターに組み込み、酵母でこの融合リゾチーム(HLz5)を分泌させることに成功した.得られたHLz5は溶菌活性を残存させ、wildタイプに比べグラム陰性菌(大腸菌)に対して著しく強い抗菌性を示すことが明らかにされた。この強力な抗菌性のメカニズムを調べたところ、HLz5はwildタイプリゾチームと同様に菌体の外膜を破壊するスフェロプラスト効果に加えて、内膜を攻撃することが明らかにされた[J.Biol.Chem.269,5059-5063(1994)]. さらに、疎水ペプチドの鎖長3,5,7残基のものを融合させたリゾチームを作成した.疎水基の長いものは分泌量が少なく、細胞内にとどまるなどの問題があるが、これらの融合リゾチームを作成することにも成功している.現在、これらのグラム陰性菌に対する抗菌性を検討中である.予備的な観察では、5残基の疎水基を融合させたものが最も強い抗菌性を示しており、この観察結果をさらに確認し、そのメカニズムについて検討してゆく予定である.
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