低酸素環境下(10.5%O_2)で飼育したラットで、赤血球当たりのヘモグロビン量及び赤血球容積の増大化が起こっていることを認めた。そこで赤血球の抗酸化機構について検討しところ、スーパオキシドアニオンを不均化するスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性はコントロール群で変化が認められないのに対して、低酸素暴露群では3日目でコントロール群の77%にまで低下した。さらに過酸化水素を消去するカタラーゼ(CAT)活性はコントロール群で徐々に増加するのに対して、低酸素群では活性に変動は認められなかった。一方、赤血球の主要な過酸化水素消去経路であるグルタチオン酸化還元系に関する酸素活性(グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンレダクターゼ、グルコース〓リン酸デヒドロゲナーゼ)及び還元型グルタチオン濃度はコントロール群と低酸素群間で差は認められず、また赤血球膜の損傷の指標となる過酸化脂質濃度も両者間で同じレベルを維持していた。ラットの赤血球の寿命は60日であり、赤血球にはタンパク質合成能がないから、低酸素暴露による赤血球でのSOD活性の急激な低下とCAT活性上昇が徐々に抑制れているのは、それぞれの赤血球の段階と赤芽球の段階で起こっていると推測された。そこで低酸素暴露後2週目の赤血球を老齢赤血球と幼若赤血球に分離したところ、SODは幼若赤血球のみならず老齢赤血球でも活性がコントロール群に比べて減少しており、またこの減少がSODタンパク質の減少によるものであった。さらにCAT活性は老齢赤血球ではなく、幼若赤血球の段階でCATタンパク質の減少に伴って低下していた。これらの結果から、低酸素暴露後、赤血球のSOD活性及びCAT活性はそれぞれ赤血球及び赤芽球の段階で調節されていることが明らかとなった。
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