研究概要 |
今回の研究は低酸素暴露によるラットの胃の機能に及ぼす影響を検討した。実験には、1日4時間の高タンパク質食(HP)(実験1,2,4:550g casein/kg diet)、通常タンパク質食(NP)(実験3:200g caseub/kg diet)、市販の通常タンパク質食(NPu)(実験5,6:日本クレア:CE-2)での間欠自由摂食に2週間順化させたラットを使用した。実験1で4時間HPを摂食後、ラットを低酸素(7.6%O_2、10.5%O_2)に暴露したところ、低酸素が尿中尿素の排出を遅延させ、10.5%O_2よりも7.6%O_2で顕著であることが判明した。実験2では4時間HPを摂食後、7.6%O_2に暴露したところ、胃排出遅延が認められた。実験3では、4時間NPを摂食した後7.6%O_2に暴露したところ、尿中尿素排出に有意な差は認められなかったが、4時間NPを摂食した後10.5%O_2に暴露したところ、胃排出遅延が認められた。実験4では、4時間HPを摂食した後、7.6%O_2または10.5%O_2に暴露したところ、血中ガストリン濃度が6時間後に10.5%O_2ラットとコントロールラット間に有意な差はなかったが、7.6%O_2ラットではコントロールラットの2.3倍に上昇していた。さらに絶食後に低酸素に暴露したところ、3時間後と6時間後で10.5%O_2も7.6%O_2もともにコントロールよりも有意にガストリン濃度は高かった。実験5では、絶食下で幽門を結紮したラットを7.6%O_2または10.5%O_2に3時間暴露したところ、低酸素が胃酸分泌を抑制し、ガストリン濃度を上昇させることが判明した。実験6では絶食下で幽門結紮したラットにHC1を経口投与後、7.6%O_2に暴露した。その結果、生理食塩水を投与後7.6%O_2に暴露したコントロールラットと同レベルのガストリン濃度になった。これらの結果から、低酸素暴露は胃排出及び胃酸分泌を抑制し、そして低酸素による胃酸分泌抑制効果は正のフィードバック機構を通してガストリン放出を促進していることが判明した。
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