八幡平の標高1200〜1600mの間において融雪量、積雪面上の熱収支観測を4月下旬から6月下旬に行った。観測項目は、雪面低下量、積雪表層密度、純放射量、日射量、反射量、気温、相対湿度、風速、雪面温度である。その結果、以下の事が示された。(1)日融雪熱量は、季節の進行とともに増加した。この傾向は特に雲の少ない条件下で顕著であった。(2)季節の進行による日融雪熱量の増加は、潜熱と顕熱の乱流輸送量の増加の影響が大きく現れていた。この結果、日融雪熱量に占める純放射量の割合は季節の進行とともに減少し、10%程度まで減少する事もあった。これまで観測例の多い低標高地帯では、一般に純放射量が融雪熱量に占める割合は非常に大きい。上記の事は亜高山帯での融雪特性として注目される。(3)日融雪熱量の増加とともに純放射量が占める割合は減少した。また、この傾向は日射量が小さい日においてより顕著であった。低標高地域での結果も合わせて検討したところ標高にかかわらずこの傾向は同じ傾向線で近似可能であった。また、国内外の既往の観測結果も今回得られた分布範囲内に位置した。(4)亜高山帯における融雪前期では低標高地点の方が融雪量が多い傾向を示した。しかし、融雪後期には高標高地点の融雪量が大きくなる傾向を示した。この結果を熱収支的に説明するためには、気象要素の時空間的分布の観測とシミュレーションが必要となる。
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