ヤマビルの総合的管理(密度低下、分布域の局限化等)システム確立の基礎として、以下の項目について基礎的な方法と技術を確立するための調査と検討を行った。 1.ヤマビルの成長および栄養状態を識別するための方法としては、体重および体長等の形状を電子天秤および万能投影機を使って測定した。その結果、体重と後吸盤の直径および索餌行動の有無によって、成長および栄養状態をほぼ推定できることがわかった。 2.飼育管理技術で重要な給餌方法については、野生ジカなどの死亡個体から取り出した新鮮な肝臓や生きたカエルなどの両性類で吸血実験を行ったが、吸血はみられなかった。給餌方法の検討は今後の課題である。 3.野外個体群調査方法については、「息ふきかけ法」による分布の範囲、個体数の季節変化、生息密度などの調査を引き続き毎月行った。しかし、より信頼度の高い野外個体群調査方法の確立は、今後の課題である。 4.生息環境測定については、毎月の生息数調査時における気温、湿度の測定を行った。その結果、ヤマビルは気温は10℃以上、湿度は50%以上あれば、索餌行動を起こすことができることがわかった。また、冬期の生息場所の温度測定方法の検討を行った。 5.ヤマビルの分布域の拡大および個体数の増加に密接に関係していると思われる野生ジカの生息数調査を行った。また、野生ジカの有害駆除個体等のヤマビル吸血痕調査も行った。その結果、ヤマビルの増加に野生ジカの動態が密接に関係していることがわかった。
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