防除対策の資料を充実する目的で、主としてヤマビルの生態に関する基礎的研究を行った。 ヤマビルの個体数増加および分布域拡大に、ニホンジカの増加が大きく関与していると考えられた。ニホンジカはヤマビルの好適な寄主であり、かつ運搬者であると考えられた。 索餌行動にははっきりした休止期はみられず、気温10℃、湿度60%以上であれば索餌行動を起こした。索餌行動の間隔は、長いものでは11カ月間であった。また、索餌行動を起こした個体の含水率は約80%であった。 交尾行動の観察に成功した。気温10℃、湿度60%以上であれば交尾行動がみられた。 生息環境調査として、主な生息場所である林床の落葉の下の温度を測定した。林内気温と比較して落葉の下は温度の変動幅が少なかった。落葉は層化することによって、外気温をかなり遮断できると思われる。 また、飼育個体群の給餌方法として、ふ化直後の子ビルに犬から吸血させた。4回の吸血後に2個体から4個の採卵に成功した。生活史の解明に重要な資料を得ることができた。また、採集した大きな個体に、人の血液と人工血液のアルブミンを注射器で注入した。簡便な方法であるが、採卵に成功した。 他の地域の個体群との成育状況を比較するため、沖縄県石垣島、西表島で「サキシマヤマビル」を採集した。当地域と比較して大型の寄生動物が極めて少なく、生息密度は低かった。採集した2個体は持ち帰り、飼育をしている。今後、当地域のヤマビルの生態と比較していくことが重要であると考える。
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