東南アジア、とくにタイとの比較で、わが国で唯一、「焼畑林業」、すなわちタウンヤ法として、スギの造林が継続実行されている新潟県岩船群山北町での調査を続け、火入れ、間作、スギ植栽の実際を観察・記録し、年次別造林面積統計および作物(アカカブ)の収量・生産統計をまとめることができ、山北町での焼畑林業の推移、および現在かかえている問題点をかなり明確に把握することができた。 この方法の利点は、造林者にとっては、あくまで間作による造林経費、とくに地拵え費・下刈り費の節減、一方の耕作者にとっては自然食ブームで高価に取引されるアカカブの収穫にある。しかし、現今の木材価格の低迷から、伐採が差し控えられ、新しい造林地はきわめて限られる。このことにより、焼畑林業の停滞、連作できないアカカブの生産の停滞が起こっているを明らかにできた。 東南アジアとはその自然・社会・経済条件が大きく異なり、山北町での技術が直接応用できないが、付加価値のある作物の選択、森林組合による耕作地の斡旋・アカカブの共同出荷、さらには山北町自体によるアカカブ収穫のイベントなど地域経済振興・地域社会の維持に対するバックアップなど、東南アジアのタウンヤ法での造林・森林再生の実際に、いくつかの参考意見をみつけることができた。 これら得られた成果の一部を日本林学会大会など学会で講演するとともに、森林立地、京都大学農学部演習林報告などに発表した。また、研究成果報告書を作成・刊行した。
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