研究概要 |
研究着手の初年度であり,林野庁や県庁等の行政機関や現地の調査,および各種の催への参加、などによって広く情報を収集することに努めた。従来の普遍的形態である森林所有者による森林経営・利用ではない形の、「参加・協約にもとづく森林利用の増進」の進展を分類すると、まず2つに大別される。木材生産のための「森つくり」とそうでない内容での森林利用である。前者の造林公社による分収造林事業は、昭和30年代から行なわれていたものであり、その現段階での問題点をびわ湖造林公社において予備調査を行なった。また、市民が費用負担して参加し、その造林事業を支える分収育林事業の実態についての多くの情報も収集した。 後者については、(1)貴重な自然としての森林を保存するために市民参加型の運動が展開しているものと、(2)むしろなんでもない「身近な自然との触れ合い」や「都市と山村との交流」の場として森林に意義を見出だして「増進」が図られているケースに分類できる。(1)には、市民運動としてのナショナルトラスト運動(保存を目的として所有権を取得)があり、神奈川県のように「かながわ森林基金」をつくって対応している例もある。 (2)に関しては、現代的な「里山つくり」、現代的な「入会山つくり」として進展が見られる。市民主導型のものは、ゴルフ場反対運動などの抵抗を契機に結合し、よりポジティブなものを目指して生み出されたもので、「阿蘇グリーンストック」や島根県大東町の「生涯学習林」などがある。行政主導型のものとして、神奈川県の「きずなの森造成事業」、横浜市の「ふれあいの樹林制度」、福岡県矢部村の「秘境杣の里」などがある。国有林の分収育林事業での「法人の森」もこの類型のものと考えてよいであろう。事業体主導型のものとしては、福島県只見町の「たもかく」、京都府伊根町森林組合の信託契約・森林レクリエーション事業がある。
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