アラカシとクスノキの苗木に対して潅水を停止して、急性の水ストレスを与えたところ、土壌が乾燥していく過程での樹体からの水の蒸散速度や光合成速度の変化に樹種間で明らかな違いが認められた。さらに、急性の水ストレスが植物に与える最も顕著な影響としては、夜明け前の水ポテンシャルの低下と、光合成速度、蒸散速度が1日の環境条件の変化に対しなくなることであること明らかとなった。 平成5年度から生育させていた苗木(アラカシ、クスノキ、ケヤキ、コナラ、ユ-カリ、アカマツ)を用いて、慢性的な水ストレスが樹木の成長過程や貯水能力に与える影響についての調査・測定を行い、葉の伸長生長、幹の肥大成長に明らかな影響のあることが分かった。さらに葉の水分特性が水ストレスの程度によって変化する事実が確認され、それらには明らかな樹種間差が認められた。同時に、こうした実験のためには「れき耕栽培システム」がきわめて有効であることが明らかとなった。主な理由としては、水ストレスの管理が確実となり、夏の土壌あるいは培地の高温化が防げる。さらに、長期間の測定において、試料が大型化しても余分な支持構造を必要としない。 樹木の貯水量に関する実験はコナラを用いて野外で行い、樹液流速度に対する樹幹切断の影響や樹体の重量変化の様子から、貯水部分とその量についての推定を行った。 自然状態で生育している樹木の切り枝からの蒸散速度を測定することで、機構上産速度とクチクラ蒸散速度の季節変化を数種の樹種について求め、水ストレスに対する反応の樹種間差についての解析を行った。
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