研究概要 |
オオバヤシャブシおよびヒサカキの他感作用物質が材線虫病感受性に及ぼす影響を明らかにするために、その風乾した葉・細枝の水抽出液の1倍、10倍、100倍、1,000倍の希釈液を用いて子葉展開後のクロマツの実生を育てた。抽出液による栽培開始の1週間後に、これらの実生の一部にマツノザイセンチュウを1,000頭または純水を接種して、その後の死亡を調査した。その結果、いずれの植物のどの希釈濃度でも、線虫を接種しない場合に比べて接種した場合の死亡率が高くなった。線虫接種の場合、1,000倍の希釈液の栽培では、オオバヤシャブシ抽出液の方がヒサカキ抽出液より高い死亡率を示した。 オオバヤシャブシの他感作用物質を同定するために、新鮮な葉からのメタノール抽出物を分画し、純水で500ppmまたは1,000ppmの濃度で、24℃、暗黒の条件下のレタスの幼根の成長を阻害し、その先端部約1/2〜2/3を褐色にする物質の存在を示した。^<13>C-NMRスペクトルおよび生物検定によって、この物質はD-(+)-カテキンと同定された。また、レタスの幼根に対する強い成長阻害作用は、根によるカテキンの代謝産物によってではなく、カテキンそのものによって起こると結論づけられた。 オオバヤシャブシが材線虫病の媒介昆虫の増殖に及ぼす影響を明らかにするために、網室内にオオバヤシャブシまたはヒサカキの鉢植えを置いて、マツノマダラカミキリ成虫をアカマツ枝で飼育した。1週間おきにアカマツ枝と産卵用のアカマツ丸太を交換して、成虫の生残率と産卵数を調査した結果、網室内の共存樹種によってカミキリの生残率と平均産卵数には差が認められなかった。
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