研究概要 |
マングローブ植物が高塩分濃度環境下でどのようにして生存しているかをあきらかにする目的で、Avicennia marinaとRhizophora apiculataを塩分濃度をかえてに栽培し、光合成速度、蒸散速度、水利用効率、木部圧ポテンシャル、浸透ポテンシャル等を測定した。通常の海水より低い塩分濃度の範囲では,A.marinaは光合成速度も蒸散速度も塩分濃度の影響をあまり受けないが、R.apiculataはあきらかに海水濃度の25%の塩分濃度で最大値を示した。通常の海水より高い塩分濃度では,両樹種とも光合成速度、蒸散速度が低下するが、蒸散速度の低下はA.marinaの方が大きくなった。水利用効率を比較すると、A.marinaでは、100%区以上の高い塩分濃度下で急激に上昇しているのに対し、R.apiculataでは25%区をピークにして高い塩分濃度下で低下していた。A.marinaは高塩分濃度下で蒸散速度を押さえることにより、水利用効率を上げているものと考えられる。 以上の結果からA.marinaは水利用効率を上げることにより高い塩分濃度下での生存を可能にしており、冠水頻度が低く、塩だまりのような、基質の塩分濃度が通常の海水よりも高くなる場所でも生育できることを示している。R.apiculataは25%以上の塩分濃度では水利用効率が低下し、基質の塩分濃度が通常の海水よりも低い場所に主に分布する樹種であるといえる。 A.marinaについては排塩機構をしらべた。塩類腺の数と構造は培養液の塩分濃度の影響を受けなかった。塩類腺からは主にNaとClを排出しており、他にK,Ca,Mg等を排出していた。塩分排出速度は日の入前と真夜中に最大値を示した。培養液の塩分濃度が増加するにつれて塩分排出速度が増加したが海水濃度を越えると、逆に減少した。葉内の塩分蓄積もこれと同様の傾向があった。落葉量は塩分濃度が増加するにつれて増加し、高塩分濃度下で葉に蓄積した塩分を落葉により樹体外に廃棄している可能性を示した。
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