火山活動に伴い放出される火山灰は、地表面の被覆、土壌浸透能の低下、表面流出量の増大というかたちで流域の水文環境を大きく変化させ流域からの水や土砂の流出を増大させる。こうした一連の現象は、火山噴火の規模によっては、火山体だけでなく広く火山周辺の森林山地にも及ぶことになる。このことに関しては、本研究の対象地としている大学演習林内の森林試験流域で得られている雨量・流量データ解析の結果、降灰が激しくなるとそれ以前より増水の早さが約2倍、直接流出量が約1.3倍増加したことが明らかにされている。火山活動に伴う火山灰が森林流域の水文環境に及ぼす影響としては、これらのほかに、火山灰が大気中で水滴に捕捉され雨水の水質に及ぼす影響や、林地に堆積した火山灰が河川水や湧水の水質に及ぼす影響が考えられる。 本研究は、桜島の火山活動により毎年多量の火山灰が降下し、地表面に堆積している大学演習林内の森林試験流域を対象にして、火山灰が雨水や河川水・湧水の水質に及ぼす影響を明らかにすることを目的としたものである。本年度は、大学演習林内に設けた試験流域(面積約16ha)の下流端に購入した雨量計、水位計、pH計を設置しそれぞれの連続観測を開始した。また、桜島火山灰の影響を把握するために降灰量の測定、風向風速の測定も開始した。本年度は桜島の活動が非常に穏やかであり、試験流域が降灰に見舞われることが少なかった。その結果、試験流域の河川水のpH値は6.8前後でほとんど変化がみられなかった。雨量計、水位計、pH計などの観測はすべて現在も継続中であり、火山活動が活発化した場合にはすぐに対応できる状態にある。
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