火山活動に伴い放出される火山灰は、地表面の被覆、土壌浸透能の低下、表面流出量の増大というかたちで流域の水文環境を大きく変化させ流域からの水や土砂の流出を増大させる。こうした一連の現象は、火山噴火の規模によっては、火山体だけでなく広く火山周辺の森林山地にも及ぶことになる。火山活動に伴う火山灰が森林流域の水文環境に及ぼす影響としては、これらのほかに、火山灰が大気中で水滴に捕捉され雨水の水質に及ぼす影響や、林地に堆積した火山灰が河川水や湧水の水質に及ぼす影響が考えられる。 本研究は、桜島の火山活動により毎年多量の火山灰が降下し、地表面に堆積している大学演習林内の森林試験流域を対象にして、火山灰が雨水や河川水・湧水の水質に及ぼす影響を明らかにすることを目的としたものである。大学演習林内に設けた試験流域(面積約16ha)において、雨量計、水位計、pH計による観測を継続した。得られた観測データから以下のことが明らかになった。 1 1994年は桜島の火山活動が穏やかであり、試験流域はほとんど降灰がなく、河川水のpH値は6.8前後を示した。 2 1995年は火山活動が活発化し、試験流域はしばしば降灰に見舞われた。その結果、河川水のpH値はわずかであるが低下し6.6〜6.7を示した。 試験流域における雨量計、水位計、pH計などの観測は継続しており、さらに長期間のデータが得られれば火山活動に伴う火山灰が河川水の水質に及ぼす影響を詳細に解析できると思われる。
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