沖縄県内に分布するマングローブ構成樹種の中で、西表島、石垣島をはじめとし沖縄島にも広く分布するオヒルギ(Bruguiera gymnorrhiza)とメヒルギ(Kandelia candle)を研究材料とし、垂直ポリアクルアミド平板電気泳動法を用いたアイソザイム分析により、集団遺伝学的解析を行った。当該研究は二年計画で、本年度はその第一年目であるが、本年度得られた結果の概要は次の通りである。 1.電気泳動が行われたアクリルアミドのゲル上に明瞭なザイモグラム(zymograme)を得るために染色方法が改良され、少なくても7酵素種では明瞭なザイモグラムを得ることが可能となった。 2.明瞭なザイモグラムを得ることができた7酵素種の中で、非特異性エステラーゼ、ホスホグルコムターゼはじめ5酵素種については、いくつかの遺伝子座の推定が可能となった。 3.推定が可能となった遺伝子座では、表現型(phenotype)から遺伝子様式が推定され、この遺伝様式に基づき、遺伝子型(genotype)が求められた。 4.求められた遺伝様式と遺伝子型から、対立遺伝子の遺伝子頻度が採取集団ごとに計算された。 以上のような集団ごとの遺伝子頻度の違いに基づき、遺伝子的距離(genetic distance)が求められつつあるが、推定遺伝子座には不活性型の遺伝様式を示すものがいくつかみられ、この不活性型の遺伝様式の推定遺伝子座では対立遺伝子の頻度を求めることができない。したがって、当該研究の第一年目の成果のみでは、まだ十分に精度の高い遺伝的距離の算出には至っていない。
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