平成6年度は、種々の接合条件を想定して行った既報および前年度の接合部耐久力試験のうち、主材を木材、側材を合板とし、CN50釘を用いた釘接合部を対象として、その最大耐力および破壊形態について解析的検討を行った。合板を側材とした釘接合部では、木材の繊維方向にせん断力が加わる場合は合板のパンチングシアを、木材繊維の垂直方向にせん断力の加わる場合は木材の割裂を生じることが多い。ここでは、加力方向によるこの破壊形態の違い、またそれと連動した最大耐力、最大変形態の違いを検討するため、割裂破壊に対しては、研究代表者が既にボルト・ドリフトピン接合部の最大耐力解析に用いてその適合性を確認している「破壊面圧変位」という考え方を適用した。また、パンチングシアに関しては、釘頭部が変形とともに合板にめり込み、その一部が合板を突き抜けたときに破壊を生じるという仮定を採用した。この2つの破壊条件仮定を想定し、弾性床上の梁理論に基づく段階的線形解析により、接合部の変形解析を行いながら、計算の各ステップで両条件についての判別を行い、いずれか一方の破壊条件が満たされたときに接合部が破壊するものと考えて、最大耐力解析を行った。その結果、以下のような結論が得られた。1)木材の割裂破壊条件として破壊面圧変位を仮定すると、加力方向による破壊形態の違いを解析的に説明できる。2)木材繊維に垂直方向にせん断力が加わり、同じように主材が割裂破壊する場合にも、主材厚によって最大荷重や最大変位が異なり、特に釘長に対し主材厚に余裕のある場合は最大荷重、最大変位ともに大きくなるが、この点も同様に説明できる。3)釘頭部の合板へのめり込み抵抗を適切に評価できれば、合板を側材とする釘接合部の最大耐力をある程度定量的に計算できる可能性が確認された。
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