初年度は、引張型の釘1面せん断試験を実施した。試験体の構成は、主材、側材ともに木材としたもの、主材を木材、側材を合板としたもの、主材を木材、側材を鋼板としたものの3種類とした。木材の繊維方向は、合板および鋼板を側材とする試験体では、せん断力の方向に垂直となるように、主材、側材ともに木材を用いた試験体では、その一方または両方の繊維方向がせん断力の方向に垂直となるようにした。実験には枠組壁工法用CN50、CN75の2種類の釘を使用した。その結果、主材、側材の組み合わせの違いや、主材の厚さによって様々な荷重-すべり特性が現れるものの、木材の繊維に垂直方向にせん断力が加わると、ほとんどの場合木材の脆性的な割裂破壊が生じることが確認された。この実験結果は木材学会誌に投稿した。最終年度は、主材を木材、側材を合板とした釘接合部の耐力性能について解析した。ここでは、加力方向による破壊形態と最大耐力の違いを検討するため、2つの破壊条件仮定を用い、弾性床上の梁理論に基づく段階的線形解析を行った。まず割裂破壊に対しては研究代表者が以前に発表した「破壊面圧変位」仮定を用いた。次にパンチングシアに関しては釘頭部が変形とともに合板にめり込み、その一部が合板を突き抜けたときに破壊を生じるという仮定を適用した。その結果、以下のような結論が得られた。1)木材の割裂破壊条件として破壊面圧変位を仮定すると、加力方向による破壊形態の違いを解析的に説明出来る。2)木材繊維に垂直方向にせん断力が加わり、同じように主材が割裂破壊する場合にも、主材厚によって最大荷重や最大変位が異なり、特に釘長に対し主材厚に余裕のある場合は最大荷重、最大変位ともに大きくなるが、この点も同様に説明できる。3)釘頭部の合板へのめり込み抵抗を適切に評価できれば、合板を側材とする釘接合部の最大耐力をある程度定量的に計算できる可能性が確認された。
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