樹木のリグナンの生合成機構を解明するため、その一環として、平成6年度は、安定同位体標識したモノリグノール及び数種のフロフラン型リグナンを合成すると共に、リグナン類の季節変動を検討した。 これまでにフロフラン型リグナンであるFargesin及びKobusinをラセモイドテトロールを中間体として6段階の経路で化学合成した。また、Coniferyl alcoholの酵素的酸化カップリングによりPinoresinolを合成し、さらにそのメチル化によりEudesminとMonomethylpinoresinolを合成した。また、重水素化モノリグノールであるConiferyl alcohol-^2Hを合成した。現在、^<14>C-標識のMonomethylpinoresinolの合成を検討中である。 次に、植物体中でのリグナンの生成の活性を把握するため、植物材料としてキタコブシを用い、その葉部中のリグナンの季節変動を調べた。種々の芳香核置換パターンを有する9種のフロフラン型リグナンに関し検討した結果、葉部中ではEpimagnolinの含有量が極めて高く、また、Pinoresinolがキタコブシのリグナン生合成において重要な中間体であることが示唆された。さらに、同様に観点から、Coniferyl alcohol-^2Hを7月と9月に採取した若枝に投与したが、フロフラン型リグナンへの取り込みを確認できなかった。この点に関し、これらのリグナンの生成に関する活性が特定の時期に発現する可能性があり、現在検討中である。 今後、合成したリグナンを用い、葉部あるいは若枝組織から調整した粗酵素抽出液による無細胞系でのトレーサー実験により、上記リグナンの生成のための酵素活性の測定を行う予定である。
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