研究概要 |
リグナン及びネオリグナンは、いずれもフェニルプロパン体から誘導される成分群であり、植物界に広く分布する。リグナン類は様々な生理活性を有する。 本研究では、樹木のリグナンの生合成機構を解明するため、広葉樹としてキタコブシ、針葉樹としてトドマツを用い、それらのリグナン類の生成について検討した。 まず、それぞれの樹種のリグナン類の構造的特性を明らかにし、それらの生成を検討するうえで必要と考えられるリグナン類及び標識化合物を合成した。これらは、(±)-pinoresinol、(±)-monomethylpinoresinol、(±)-eudesmin、(±)-syringaresinol、(±)-monomethylsyringaresinol、(±)-yanagambin、(±)-kobusin、(±)-fargesin、(±)-piperitolの9種のラセミ体リグナン及び[9,9-^2H2, OC^2H3] coniferyl alcoholと[3-O^<14>CH3] monomethylpinoresinolの2種の標識化合物である。 キタコブシのリグナン生成の検討では、In vivoの標識実験で、重水素coniferyl alcoholがpinoresinolに取り込まれることが確認され、キタコブシ樹体内におけるpinoresinolの生成が2分子のconiferyl alcoholのインタクトなカップリングによるものであることが示唆された。しかしpiperony基が有するfargesinやkobusin等のリグナンへの取り込みは確認できなかった。また葉部無細胞抽出液がpinoresinolのメチル化を触媒することが明らかになり、pinoresinolからのmonomethylpinoresinol及びeudesminの生成経路が示唆された。 トドマツのリグナンの検討では、種々のリグナンが確認され、特徴的なlactol型リグナン類は辺・心材部で生合成されることが明らかとなった。また、phenylpropane3量体型リグナンであるAciesolAは、lariciresinolとconiferyl alcoholのカップリングにより生成することが示唆された。
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