木材の透過性改善を目的に、生材を耐圧気密容器中で100℃以上の水蒸気を用いて所定時間蒸煮処理した場合の材質変化と透過性改善効果を検討した。 得られた結果は以下の通りである。 1)生材を100℃以上の水蒸気で蒸煮すると必ず材色の暗色化と強度性能の低下を伴う。この程度は蒸煮時間よりも蒸煮温度に大きく依存し、針葉樹よりも広葉樹の方が著しい。蒸煮処理材の利用を前提とした処理条件の限界は、針葉樹材では140℃、2hr程度、広葉樹材では120℃と考えられる。一方これら蒸煮処理材の気乾までの収縮量は無処理に比べて大きいが、気乾に達した後は小さくなり、寸法安定法が賦与されている。 2)蒸煮処理による針葉樹材の透過性改善効果を、木口面吸水量、乾燥速度および加減圧注入量で評価した。いずれの場合も材質の熱劣化の程度が大きくなるほど、すなわち蒸煮温度が高くなるほど改善されることが明らかになった。この原因は閉塞した有縁壁孔の壁孔膜の破壊ないしそれに沈着した成分の除去によることがSEM観察から明らかとなった。それに対して広葉樹材の場合は、蒸煮処理によって道管に存在するチロースの破壊に効果のあることが透気性の検討から明らかにされたが、液体流動に関してはこの破壊部分が微小であったことを反映して木口面吸水量の増大には結びつかなかった。 3)材質の熱劣化を抑制しつつ透過性改善効果を高める蒸煮処理法として、予め蒸煮処理し、軟化状態にある木材に高圧空気を作用して透過障壁を破壊する方法を開発した。例えば120℃で2hr蒸煮後6.5kgf/cm^2の空気圧を30min作用した葉樹材の加減圧注入量は、140℃で4hr蒸煮処理した場合よりも若干多くなり、この蒸煮後空気加圧処理法の有効性が示された。
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