前年度に引き続き、(1)セルロース細胞壁またキチン質を硫酸または塩酸加水分解により微結晶懸濁液とし、磁場内でこの数滴を撥水処理したスライドガラス上にのせて乾燥させてフィルムを作成した。さらにそのフィルムの物性を、フィルムを真空中で電気的に振動させて動的ヤング率を見積もる装置を試作し、測定した。その結果、フィルムのヤング率は微結晶の配向度と極めて緊密な関係にあることが判明した。(2)前年、同様の実験を静的な強電場(30kV)の中で行ったところ、長軸が膜の中心に向かって放射方向に配向した。そこで電場配向の原因を探るために、分子分極率を計算した。分極率は分子軸とそれに直交する軸との差が大きく、パーティクルボードの電場配向実験と同様に分子鎖が電気力線の方向に配向することが示唆された。このことは実験結果と一致せず、その原因として水懸濁液の電気的な性質がかかわっているものと推定した。この現象は今後の検討課題として残された。(3)前年度、生体におよぼす影響を調べるために海藻(マガタマモ)を最大0.5テスラの磁場内で育てたところ、対照試料とは全く異なる生育をするものが見られた。追試を何度か行ったが再現性は良くなかった。またチリモを電場内で育て、細胞壁構造の変化を調べた場合においても、ミクロフィブリル配向については顕著な変化は見られなかった。その他、生体を使用した実験をいくつか行ったが、磁場または電場と相関の高い変化は認められなかった。
|