初年度は塗工紙やOA古紙などの古紙資源の利用における基礎的な諸問題の解明の出発点として、古紙から製した再生紙の界面化学的、画像科学的および色彩科学的データの集積と解析を中心に研究を行った。研究実を要約すると以下の通りである。 1.再生紙に於ける古紙の混入率の違いにより繊維の分散系の沈降特性・凝集特性は大きく異なり、また劣化よる表面特性の差はゼータ電位や添加薬品の反応性の差として現れた。特に角質化や表面特性の変化はシート濡れ特性や接触角の変化として現れ、これらのデータから古紙シートの物性値の評価が可能なことが分かった2.古紙の混入率の異なるシートの白色度や可視光における分光測色データから、古紙の混入率の上昇は可視の範囲内における分光反射率を減少させる傾向にあるが、測定の波長が長波長になるに従い、反射率が上昇すことが分かった。なお設備備品費で購入した高速データ処理目的の32ビットパソコンと画像入力のためのイージスキャナを用いて古紙混入シートの色彩画像取り込みと明度・彩度・色相などの色彩科学的パラメータの析を行ったが、分光測色データと比較することにより古紙シートの色彩科学的な品質評価の可能性が示唆され3.リサイクルによるセルロースの物性値の変化を特に力学物性と水素結合形成能力および繊維間結合の形成の関係から解析し、リサイクルによりシートの劣化は主に光学的には比散乱係数の変化として、力学物性は耐強度の変化として発現することが確認された。 第2年度は以上の結果の理論的な解析を更に行なう予定である。
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