本研究は古紙の利用率を更に高める方途の一端として界面化学的および画像解析的手法を用いた古紙パルプおよび再生紙の物性評価法を確立することを目的としているが、得られた成果は次の通りである。 第1年目は古紙資源の利用における基礎的な諸問題の解明の出発点として、古紙から調製した再生紙の界面化学的、画像科学的および色彩科学的データの集積と解析を中心に研究を行った。特に再生紙に於ける古紙の混入率の違いにより繊維の分散系の沈降特性・凝集特性は大きく異なり、また劣化による表面特性の差はゼータ電位や添加薬品の反応性の差として現れ、これらのデータから古紙シートの物性値の評価が可能なことが分かった。なお設備備品費で購入した高速データ処理目的の32ビットパソコンと画像入力のためのイメージスキャナを用いて古紙混入シートの色彩画像取り込みと明度・彩度・色相などの色彩科学的パラメータの解析を行ったが、分光測色データと比較することにより古紙シートの色彩科学的な品質評価の可能性が示唆された。 第2年目には初年度の結果の理論的解析、シート物性の評価、画像データベースの構築を当初の目的としたが、再生紙の光学特性の評価では残存インキ粒子を持つ再生紙およびそのモデルとして網点よりなる無彩色印刷色見本をイメージスキャナで取り込み、更に色差計兼分光光度計を用いて無彩色画像の評価を行ったところ、人間の視覚による無彩色の認識がイメージスキャナである程度まで定量的に評価可能で、色彩科学的に残存インキ画像を評価可能なことが分かった。古紙資源評価モデルと画像データベースの構築では各種の再生紙画像と無彩色印刷色見本をイメージスキャナで取り込んだ後に市販のソフトウェアを用いて光磁気ディスクに保存し、画像データベースを構築したが、物性値全体を評価する数学モデルは現在構築中である。
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