天然リグニンの分子特性を保有した機能性リグニン素材(リグノフェノール誘導体)を設計するとともに、その合成プロセスおよび機能に検討を加えた。 1.合成プロセス:フェノール系リグニン素材合成プロセスとして、濃酸およびフェノール誘導体より構成される相分離反応系処理法を考案した。反応系への疎水性溶媒の添加は、リグニンおよび炭水化物の機能化速度制御に用い得ることを認めた。 2.分子構造:合成リグノフェノール誘導体は分子内にほとんど共役系を有していないこと、導入されたフェノール誘導体は、その約77%がリグニン側鎖α位にC-C結合しており、また約16%がCγ位に、そして残り約7%がそのフェノール性水酸基を通してリグニン側鎖にエーテル結合していることを明らかにした。さらに、処理過程における単位間結合の解裂はα-アリールエーテルに限定され、側鎖β、γ位はほとんどインタクトなまま保持されていることを確認した。 3.分子構造制御:アルカリ処理によるリグノフェノール誘導体の分子量変動パターンと、側鎖α位における隣接基関与効果発現可能なフェノール核の比率との間には、明確な相関があることを明らかにした。したがって、合成時、側鎖α位導入フェノール核の構造とその分布をコントロールすることにより、規則的にリグノフェノール誘導体の分子量制御が可能である。 4.機能特性:リグノフェノール誘導体は従来のリグニン試料にはない際だったタンパク質親和性と示し、しかもリグノフェノール上に固定化された酵素は高い活性を保持していることを確認した。リグノフェノールタンパク質アフィニティーは主として疎水的相互作用により発現していることを明らかにした。
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