研究概要 |
木材の横方向における力学的特徴は、細胞壁実質と空隙とで形成される幾何形状に大きく依存するため、繊維方向における場合、あるいは空隙を持たない他の多くの材料と異なり、それが端的に現れてくるのは、圧縮大変形過程においてである。平成5年度では、広い比重範囲にわたる広葉樹材を選び、それらについて横圧縮大変形を統一的に表現する応力-歪式を見いだした。平成6年度においては、この応力-歪式に導入した2種類のパラメーター(b、k)の粘弾性的特徴を明らかにするため、その温度・ひずみ速度依存性を検討した。すなわち、針葉樹材2種(スギ、ヒノキ)、広葉樹材4種(シラカシ、クリ、カツラ、バルサ)について圧縮速度0.05〜100mm/minで、気乾材について温度20℃,飽水材について温度20〜100℃にわたって横圧縮試験(放射方向、接線方向)を行った。得られた応力-ひずみ曲線は、上の場合と同様に、大変形領域にいたるまで、樹種を問わず上記の2種のパラメーターを含む応力-歪式で記述できた。b値は降伏後の応力上昇の度合いを示し、スギ、ヒノキについて、ひずみ速度や温度によらず一定値であった。しかし、カツラ、クリ、シラカシについてひずみ速度および温度の増加につれてb値は顕著な増加を示した。一方、kは大変形領域におけるポアソン比に関係していて、どの樹種についても温度によって変化しなかった。またスギ、ヒノキ、カツラについてはkはひずみ速度によらないが、クリ、シラカシについてのそれは、ひずみ速度の増加につれて大きく低下した。これら、b値やk値の変動の原因は主に、圧縮時に生じる材内での水分流動によることがわかった。
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