研究概要 |
キシラナーゼ抵抗性の着色性キシラン画分とパルプ残留リグニンを単離するため、部分精製したセルラーゼ/キシラナーゼ標品を用いるメンブレンバイオリアクターを使用して広葉樹未晒しクラフトパルプを加水分解した。限外ろ過膜内に残留した高分子画分(HF-P)と膜を通過した低分子画分に分離後、低分子画分はさらにシリカゲルカラムクロマトにより精製し着色性のUV吸収を持つ画分(LF-D)を単離した。これらの画分をNMR、CP/MAS-NMR、IR、UV、蛍光X線分析、ニトロベンゼン酸化、核交換反応等で分析した。LF-Dは50%以上の無機塩を含み、その主成分はNa,Si,Sであった。また^<13>C-NMRでは、側鎖の脱落したキシラン鎖が観測されたが、未知のシグナルが糖鎖の領域に認められた。またメトキシ基はノイズレベル以下であった。この画分は、キシラナーゼ(パルプザイム^<TM>)によって分解されないことからキシラナーゼ抵抗性の着色画分であると結論した。LF-Dに対しニトロベンゼン酸化と核交換反応を行ったところ、LF-Dはメトキシル基の脱落した構造とキノイド構造を多く含むことが示された。これに対し、HF-Pではジフェニルメタン型の縮合型構造を多く含んでいた。カワラタケはLF-Dを部分的に脱色したが、一般的には白色腐朽菌より土壌から分離したバクテリア叢の方が効果的にLF-Dを脱色した。脱色中の培養濾液の酵素活性を測定したところ、菌体外のLip,MnP,ラッカーゼ、キシラナーゼ活性は白色腐朽菌、バクテリア叢共殆ど認められず、2,6-dichlorophenol-indophenol(sodium salt)との反応から、脱色に還元系酵素が関与している可能性が示唆された。 また、p-位がエーテル化したベンジルエーテル型の蛍光モデルを合成し、ベンジルエーテル開裂微生物をスクリーニングした。その結果、ベンジルエーテル開裂活性のある数種の微生物を分離した。一方、精製したP.chrysosporium由来のリグニンパーオキシダーゼ(H8)はp-位がエーテル化したβ-O-4型のLCCモデルを酸化するものの、遊離した糖鎖はHPLCとGC-MSでは検出されなかった。
|