研究概要 |
近年,大断面構造用集成材を用いた木造建築物が,木構造技術の進歩にともなって多数見られるようになってきた。これらの建築物における集成材同志の接合には、ボルト接合が採用されており,かなりの数の深穴加工が施されているが,加工穴の曲がりなどの原因によって,接合位置が合わなくなるなどの問題点が生産現場から指摘されている。本研究は,深穴加工用ドリルによる大断面構造用集成材の深穴加工における加工穴の曲がり現象の原因の解明を目的にしており,平成5年度の研究では、角のみ盤を改良して深穴加工に都合のよい実験装置の製作を行って,予備実験を行った。平成6年度の研究では,穴の曲がりに影響をおよぼす因子として被削材の年輪接触角と1回転あたり送り量に着目し,大断面構造用集成材のほかにベイマツ角材やMDFのボルト締め積層材を供試して,各被削材に加工深さ100〜300mmの深穴加工を施し,この両因子が穴の曲がりにおよぼす影響について実験的に調べた。その結果,大断面構造用集成材では,1回転あたり送り量が大きくなるほど穴の曲がりは大きくなるが,供試した被削材の中では加工深さが最も深いにもかかわらず,穴の曲がりの程度はベイマツ角材よりも小さい値を示した。これは同材料が製造段階においてラミナの木表と木裏が交互に積層接着されているために,年輪接触角の影響が表れにくかったものと考えられる。ベイマツ角材では,穴の曲がりは年輪接触角の大きいほど,1回転あたり送り量が大きいほど,さらに加工深さの深いほど大きい値を示した。MDF積層材での穴の曲がりはベイマツ角材に比し極めて小さい値を示した。なお,本研究を通して,回転にともなう工具先端の振れは工具剛性によって変化し,さらに,300mm以上と加工穴が深くなると削り屑の排出が困難になることを確認しているので,今後は高剛性で削り屑の排出の容易な深穴加工用ドリルの開発を検討したいと考えている。
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