1.人為催熟した下り雌ウナギの肝臓からmRNAを精製し、それを鋳型としてcDNAを合成した。次にERの保存配列のうち2ヶ所よりそれぞれ30塩基程度を選択し、合成オリゴヌクレヲチドを作製して、PCR(polymerase chain reaction)反応を行った。その結果、約1kbpのPCR産物が得られ、これは設計したプライマー間の距離から推定される大きさとほぼ同じであった。このPCR産物の全塩基配列を決定したところ、これまでに報告されているヒトからニジマスまでの各動物種のER遺伝子と高い相同性を示した。また、ノーザンブロットの結果、E_2投与した個体の肝臓から調製したmRNAにのみ大きさ約5.8、4.6及び1.5kb特異的な3つのバンドが認められた。しかし、その反応性には雌雄ならびに個体間で差がみられた。これらの結果から、今回得られたPCR産物はER断片であることがほぼ確定された。また、ウナギの肝臓では大きさならびに発現量の異なる3種のER mRNAが存在することが示唆された。しかし、このPCR産物はERのcoding領域の半分程度しか含んでいないと考えられるため、さらにcoding領域全体を含むクローンを得るべく、このPCR産物をプローブとして成熟下りウナギ雌肝臓のcDNAライブラリーをスクリーニングした。その結果、数個の陽性クローンが得られ、現在それらのクローンを解析中である。 2.肝臓でのビテロゲニン合成機構解析の基礎資料を得るため、性成熟に伴う血中ビテロゲニン(VTG)および卵黄蛋白の変化を調べた。血中VTGはWestern blotting法より、200Kdの1本のバンドとして認められた。この200Kdのバンドは卵黄形成の進行に従い反応性は増大したが、卵黄形成後期には200Kdのバンドに加え、新たに110Kdのバンドが認められた。一方、卵黄蛋白はWestern blotting法により、主にサイトゾール画分に検出され、110Kdと80Kdの2本のメインバンドと複数のマイナーバンドが認められた。この110Kdと80Kdの2本のバンドの反応性は成熟に伴い増大するが、110Kdの方は卵黄形成後期になると反応性が急減した。以上の結果より、血中VTGおよび卵黄蛋白質は成熟に伴い質的および量的に変化することが示唆された。
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