1.エストローゲンレセプター_cDNAのクローニング 今年度は先ず、成熟中のウナギの肝臓由来の_cDNAライブラリーを作製した。次に、昨年度PCR法により得られたエストローゲンレセプター(ER)_cDNA断片をプローブとして、この_cDNAライブラリーをスクリーニングした。得られた陽性クローンの中でインサートが最長(約3Kbp)のものをP Bluescriptベクターに組み込み、塩基配列をダイデオキシ法により決定した。その結果、coding領域の全体を含むクローンであることが確認できた。ウナギERは573個のアミノ酸からなり、他種と比較してDNA結合領域で約80%、ホルモン結合領域で約55%と高い相同性を示した。次いで、人為催熟に伴うERmRNA量をノーザンブロットにより調べた結果、約5.6KbのmRNAが成熟に伴って増加することが確認できた。 2.肝臓でのビテロゲニン合成 昨年度は肝細胞培養系でビテロゲニン(VTG)の合成機構の解析を開始した。しかし、肝細胞培養系実験は操作が煩雑であるため、多数の個体のVTG合成能の比較等の実験には不適である。そこで、今年度は肝臓片を用いた簡便な短期培養を試みた。様々な成熟段階になる個体の肝臓を用いた実験の結果、催熟処理前の個体ではVTG合成・分泌能は低かったが、処理3回の卵黄形成初期までは直線的に増加した。しかし、処理5〜9回の卵黄形成中期から後期の肝臓ではVTG合成分泌能はやや減少する傾向にあった。また、核移動期になると、それは再び増加傾向を示した。このようなVTG合成・分泌能の変化は血中VTG量のそれをよく反映していた。
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