研究概要 |
本研究はビデオカメラにより撮影された小型歯鯨のスナメリの画像の解析、長崎大学の所有するスナメリの標本の精査、および飛行機や船からの目視調査に基づいて、長崎沿岸海域に生息するスナメリの個体群生態学的特性値を推定することを目的とした。本年度までの研究成果を以下に記す。 (1)飛行機からのビデオ撮影により、これまでに37群の画像撮影を行った。このうち36群は単一個体の群であり、1群のみ20頭以上の大群であった。個体の体長推定、これによる特性値の推定は予定通り次年度に行う。有明海における生息数はビデオ撮影画像より少なくとも500頭、人間の目視により2千頭と推定した(平成6年度日本水産学会で発表予定)。 (2)長崎大学の所有する標本の精査から、長崎沿岸海域における本種の年齢、成長および繁殖に関する論文をまとめた(Shirakihara et al.1993,Marine Mammal Science)。本種は体長80cmで生まれ、5歳で140cmになる。雌は6-9歳で性成熟に達する。出産期は秋から春である。 船からの目視調査に基づき、長崎沿岸海域における本種の分布と生息密度に関する論文をまとめた(Shirakihara et al.1994,Fisheries Science)。有明海、橘湾および大村湾が本種の主分布域であり、角力灘や佐世保以北での出現は稀である。生息密度は有明海中部で1平方km当たり1.31-1.60頭であった。群れの大きさは平均で1.7頭であった。
|