天草通詞島周辺海域に生息するハンドウイルカの個体群管理 -個体識別と目視観察に基づく個体群特性値の推定- 九州天草の通詞島周辺ではハンドウイルカが周年にわたって見られ、ウォッチングボ-トも運航されている。本研究の目的は、ハンドイルカ通詞島個体群の保護・管理に関連して、(1)生息数の推定、(2)分布とその制限要因の把握、(3)個体群特性値の推定、(4)将来の生息数変化の予測、(5)ウォッチングが個体群に与える影響の評価である。 調査目的に変更はないし、当初の調査計画にほぼ沿ってデータを蓄積できた。ただし、予定していた他海域でのハンドウイルカ背鰭写真撮影は行わなかった。これは、天草灘での本種の来遊期が春であると示唆され、撮影を試みる時間的余裕がなかったためである。現時点で以下の知見を新たに得た。 ・天草灘に出漁する漁業者はハンドウイルカを主に春に発見していた。しかし、彼らは天草灘内で、通詞島周辺海域のように本種が周年にわたって出現する海域を知らなかった。通詞島ハンドウイルカ個体群は定住性の可能性が高い。 ・合計で154頭の個体識別ができた。通詞島周辺海域には200頭以上生息すると推定した。平成7年の出産盛期は夏以前と推定した。 ・全ての目視観察調査で通詞島周辺で群れを発見できた。群れの出現位置はどの調査日にも重複がかなり見られ、通詞島の北1.0〜1.8kmの東西方向の帯状の範囲内にほぼ入っていた。この範囲は水深5〜20mであった。 ・ときどき複数の群れが観察されたが、各群の移動方向の一致や行動様式の類似性が認められることが多かった。
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