研究概要 |
アオサ科、ウシケノリ科に属する海藻の藻体片をアワビ・サザエ酵素または細胞粗酵素などで処理することによって、各々のプロトプラストを分離し、異なる種類間で電気刺激法によるプロトプラスト融合を行った。異種融合細胞を二層寒天平板法、一定の光、温度条件下で培養した。アナアオサ+スジアオノリ、スサビノリ+ウップルイノリ、スサビノリ+ウシケノリ、ウップルイノリ+ウシケノリでの融合細胞からの再生体が得られた。アナアオサ+スジアオノリでの再生体には両母藻より成長が速いか、または8,11-ヘプタデカジエナール(海藻の香気成分)生成活性が高い株が含まれていた。スサビノリ+ウップルイノリ、スサビノリ+ウシケノリでの再生体には、形態的に母藻スサビノリに類似しているが、スサビノリより成長が速く、光合成色素(フィコエリスリンとフィコシアニン)含量が異なる株が含まれていた。また、ウップルイノリ+ウシケノリでの再生体は、形態と光合成色素含量において両母藻とは相違が認められた。以上の融合細胞からの再生体は、いずれも染色体数がいずれかの母藻と同数であることから細胞質雑種(サイブリッド)であると判断された。スサビノリ+ウップルイノリでの融合細胞からの再生体3株は、各々自家受精による純系のフリー糸状体として保存された。これら3株は、貝殻穿孔糸状体からの殻胞子を種苗源として採苗して有明海ノリ漁場で試験養殖された。その結果、2株は成長や二次芽の着生状況などから既存のノリ養殖品種より優れていることが確認された。福岡県と佐賀県のノリ漁業者に依託し試験した結果でも同様の成績が得られた。 本研究によって、アマノリを中心とする有用海藻類の細胞融合法による育種に関する基本技術が確立され、この方法による有用品種の作出が可能となった。
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