本研究では、沖縄島の金武湾内に発達している海草藻場の中に多産する食用二枚貝を対象にして、その繁殖と加入の実態を明らかにすることを目的として、主要種であるホソスジヒバリガイとリュウキュウサルボウの生殖巣の発達状態の時期的な変化、浮遊幼生のプランクトン資料における出現、そして付着器への稚貝の定着について調査・研究をおこなった。また、それらの二枚貝についての人工繁殖もこころみた。 上記の二枚貝の繁殖盛期である夏の間に、干出と温度変化をくり返して産卵誘発を試みたが、合計7回の実験すべてが失敗に終わった。そのため、幼生の飼育実験に進めず、浮遊幼生の同定もできないままとなった。これは、今回の計画年度内に完了できなかったが、次年度以降に自主的に実験を継続して所期の成果を出す計画である。 付着器に出現した稚貝では、ホソスジヒバリガイと思われるものがもっとも多く、その他の二枚貝が数種類みられた。しかし、リュウキュウサルボウは出現しなかった。 付着器における大きさの分布の変化をみると、ホソスジヒバリガイは、浮遊幼生から付着基盤に着定した後に、しばらく成長したものが離脱して海底の砂泥中に移住するが、同種や他の二枚貝の表面を付着基盤として成長を続けるものもあった。 熱帯性の海草藻場の食用二枚貝の繁殖戦略は、夏の間不規則にくり返し産卵して、稚貝の加入を長期間続けることであることがわかった。 金武湾の海草藻場の貝類群集は種の多様性が高いが、個体群は小さく分布密度の低い種類がほとんどであった。
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