本研究は、ヨーロッパヒラガキに珪操Chaetoceros gracilis(C.g)とハプト藻Isochrysis galbana(I.g)を併用投餌して飼育し、餌料とカキの体成分ならびにカキの食味との関連を調べ、カキの肥育に適した微粒子配合飼料を開発するための基礎データを得ようとするもので、研究成果の概要は次のとおりである。 1.C.gとI.gを大量培養し、細胞数比で2:1(A区)、1:1(B区)、1:2(C区)に混合してヨーロッパヒラガキに1カ月間投餌・肥育する。また、別に対照として海面下で垂下養殖(垂下ガキ)を行った。 2.飼育ガキと垂下ガキについてグリコーゲンを含む一般成分ならびにエキス成分を分析した。一般成分飼育ガキは垂下ガキと比較して全体的に水分、脂質および灰分が多く、タンパク質とグリコーゲンが少なかった。また、飼育ガキでは餌料中のI.gの割合が大きいとタンパク質とグリコーゲンが多く、水分と灰分が少ない傾向がみられた。エキス成分、遊離アミノ酸では、各区ともTauが極めて多く1274〜1433mg(組織100g中、以下同様)となった。その他のアミノ酸ではGlu、Pro、Gly、Ala、β-Alanineが多かったが、いずれも50〜100mg程度であった。これらのアミノ酸はいずれも垂下ガキに多かったが、飼育ガキの中ではA区に多い傾向がみられた。核酸関連化合物ではADP、AMP、IMP、イノシン、UMP、GMPが認められ、それらの総量は垂下ガキに最も多く、次いでA区となった。 3.垂下ガキを対照に各区飼育ガキの食味試験を行ったところ、A区の渋味およびB区の甘味が有意に強く、A区の塩味およびC区の渋味が弱いと判定された。飼育ガキ3区間の比較ではC区はうま味が強いと評価され、総合的にC区が好まれる傾向にあった。 以上、餌料プランクトンを投与してヨーロッパヒラガキを飼育したところ、I.gの割合が多いとタンパク質、グリーコゲン、遊離アミノ酸、核酸関連化合物が多い傾向が認められたが、I.gの割合が小さいC区はうま味が強と評価され、好まれた。
|