平成5年度、6年度と日本国内で生産される重要貝類ホタテガイ、アサリ、ムラサキイガイなどにつき、ほぼ毎月ドウモイ酸のモニタリングを行った。一方、日本各地のドウモイ酸産生プランクトンと疑われている珪藻Nitzschia pungensについては、瀬戸内海で平成5、6年の2年間各週にわたってサンプリングして、調査した。他方、鹿児島県徳之島、屋久島及び花瀬崎(薩摩半島)において紅藻類中のドウモイ酸含量を調査した。また食用海藻を入手して、同様にドウモイ酸量を調べた。また一方、アラスカから輸入された食用ダンジネスクラブについても、同様に内蔵及び筋肉についても調査した。ドウモイ酸を高濃度に含むハナヤナギ海藻を接種していると考えられるオウギガニ科スベスベマンジュウガニについても同様にその内蔵を調査した。 この結果、重要貝類、食用の褐藻類、珪藻類にはほとんどドウモイ酸は検出されなかった。しかし、鹿児島県で取れる紅藻類ハナヤナギ、ケヒメモサズキJania capillacea、ニセイバラノリCoelothrix irregularis中には高濃度のドウモイ酸が含まれていた。そのうちハナヤナギについては地域や季節に無関係に、極めて高い濃度のドウモイ酸が認められた。他方、ドウモイ酸産生プランクトンと考えられる珪藻、N.pungensは。瀬戸内海の内海湾産には、ドウモイ酸を検出できなかったが、平成6年8月に広島湾で赤潮を形成したものには、僅少の0.01pg/cellのドウモイ酸が検出された。ダンジネスクラブやスベスベマンジュウガニからも特に内蔵に、僅かながらドウモイ酸が検出された。 以上、日本におけるドウモイ酸の水産物への汚染は、紅藻類以外は殆ど問題がなく、またそのルートは、珪藻N.pungens由来以外と考えられた。
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