研究概要 |
1.タマゴバロニア液胞内におけるシステインの存否 一般にシスチンは中性からアルカリ性の条件下でシステインが空気酸化されてきわめて容易に作られる。従って、液胞内ではシステインの形で存在していたものが、細胞外で空気酸化されシスチンとなった可能性があり、その調査試験を実施した。その結果、液胞液をpH2で採取したものは、シスチンの検出量が0.4μg/mlとごく微量で、pH7で採集したものではシスチンが42.0μg/ml,又、pHを2から7に上昇させると再びシスティン含量が39.7μg/mlと多くなるので、タマゴバルニアの細胞液中ではシスティンではなくシスチンの形で存在している可能性が高いと考えられる。この確認のたまに、SH基標識蛍光試薬のDACMを用いて液胞液を分析したところ、システインが39.3μg/ml検出された。この値はpH7で採取した細胞液中に検出されたシスチンの量と比べてモル比でほぼ2倍量であり、シスチンは細胞内ではシステインとして存在することが判明した。 2.システイン蓄積機構の解明 タマゴバロニアのシステインの合成酵素活性を調べるために、細胞質を庶糖密度勾配による細胞分画にかけ葉緑体と核を得た。両画分のシステイン合成酵素活性を測定したところ、葉緑体画分に1.93ユニットの活性が局在した。一方、タマゴバロニアの近縁種でシステインを蓄積しないオオバロニアでは、本酵素の活性は0.45ユニットしかなかった。従って、タマゴバロニアのシステイン蓄積は本海藻が特に強いシステイン合成酵素活性を持つためと判った。
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