平成5年度の結果から、オオバウチワエビ卵巣中に見い出されたリン脂質に富んだ新奇な低密度リポタンパク質には、プロテイナーゼ活性が存在し、卵黄タンパク質前駆体であるビテロゲニンのリポビテリンへの変換に密接に関連していることが示唆された。本年度は、この新奇な低密度リポタンパク質によるビテロゲニンの分解条件について詳細に検討することを目的とした。すなわち、リン脂質に富んだ低密度リポタンパク質の有するプロテイナーゼ活性に及ぼすCa^<2+>とリン脂質の役割を、明らかにしようとした。また、この低密度リポタンパク質が有するプロテイナーゼの性状を、各種プロテアーゼ阻害剤に対する挙動から検討した。得られた成果は、次の通りである。 1.ビテロゲニンのアポリポタンパク質はトリプシンによる分解を受け、分解後のアポリポタンパク質組成は主要な卵黄タンパク質であるリポビテリンのそれと非常によく類似していた。 2.リン脂質に富んだ低密度リポタンパク質によるビテロゲニンの分解には、Ca^<2+>とリン脂質が必要であった。このことは、ビテロゲニンからリポビテリンへの変換に関与するCa^<2+>依存性のプロテイナーゼ活性が、リン脂質に富んだ低密度リポタンパク質のアポリポタンパク質画分に存在し、このプロテイナーゼの活性化に低密度リポタンパク質中のリン脂質が必要であることを意味すると思われた。 3.リン脂質に富んだ低密度リポタンパク質画分に存在するプロテイナーゼ活性は、セリンプロテアーゼに対する阻害剤によって抑制された。
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