農場的土地利用を推進するためには、土地の零細分散錯圃を如何に解消していくかにある。 1.零細分散錯圃が解消され農場的土地利用へ向かうための農家間合意形成の理論的検討として、(1)分散錯圃が市場メカニズムによって解消しえない理由は「取引費用」、「情報の不完全性」、「外部性」が存在すること。(2)農地の組織取引において、アロ-による合意形成の不可能性、センによるパレート派リベラルの不可能性を解消すれば、農場的土地利用が実現されることが指摘できる。(3)農村集落の社会的厚生関数を構築するには、ワルラス均衡を達成するタトヌマンのプロセスを行うオ-クショナ-に類似する機能を担う主体が不可欠であること。(4)リベラルパラドックスの解消については、権利の譲渡がなされる行動規範としてセンの呈示した「共感」と「コミットメント」の2つの道徳感情の形成が重要である。 2.圃場整備事業を実施しようとしている異なった段階の2つ地区に対し実施したアンケート調査結果の解析の結果、(1)拡大意向農家は専業農家が多いが兼業農家にも専業化の動きもある。(2)若い経営主ほど拡大意欲が高く所得目標も高い。(3)委託・縮小農家の大半は兼業農家である。委託農家は多くても受託農家がいないと土地の集積は成り立たない。よって、規模拡大農家の意向は、(4)共同化よりは自己完結型の経営を望んでおり、機械所有も共同利用を望んでいない。
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