1.雇用依存型経営が数多く形成されている愛知県内の雇用実態を把握するべく、農業改良普及所や農協等の関連機関に聞き取りを行うなどした。その結果、複合経営に雇用依存型経営の多いこと、雇用形態は労働多投型部門では内職的ないしパートタイマー的雇用比率が高く、資本集約的部門では恒常的雇用者に依存するケースが目につき、果樹部門では臨時的雇用の多いことが判明した。雇用者は女性が大部分を占め、30代、40代、50代、60代いずれにも平均的に分布していた。雇用条件については、定期休暇のある経営は少なくないが、有給休暇のある経営は少なく、恒常的雇用者にしても保険を整備しているのは少なく、賃金も、恒常的雇用者にしても時給制が大半であった。作業環境上の問題は暑い・寒い、トイレ・休憩所の不足、かぶれ・筋肉痛など健康上の障害が相当数指摘される状況にある。雇用依存型経営として展開するには、雇用条件、雇用環境などの整備・充実が避けられない課題になっていることが判明してきた。 2.施設野菜・施設花卉部門における雇用中心経営の聞き取り調査によれば、家族労力で限界まで規模拡大したところで雇用導入に転換するケースが一般的で、雇用依存の企業的経営と言っても家族経営的色彩を残していること、しかし雇用依存作業について農業の自然的・産業的特性を考慮しながらその類型化と標準化を進め、また労働能力管理面では、評価基準の工夫や窮屈な時間管理の回避により、雇用者の自発性と定着を図っていること、経営主は生産管理、作業工程管理を担い、妻は人間関係管理的労働の中軸になるケースの多いこと、雇用者の提案制度を導入し、トイレの設置改装、豆腐デイなど幾つかの改善策を実施していること、雇用管理に雇用労力確保の厳しさが反映していることなどが判ってきた。
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