1.農業部門における雇用管理は、零細な資本、労働の繁閑などのため、労働力調達問題に直面する。雇用者は労働の繁閑と地域労働市場を睨みながら、調達可能な労働力を見極め、労働力確保に務めている。高原野菜地域では地域魅力を情報発信し、大都市から収穫期のアルバイト雇用を確保している。選果場では、対象は高齢者や主婦に絞られ、町人材センターや役員の責任で確保している。 2.雇用依存経営は複合経営に多く、雇用形態は労働多投型部門では内職ないしパート比率が高く、資本集約部門で恒常的雇用、果樹で臨時的雇用が多い。雇用者は女性が大部分を占め、各年齢層に平均的に分布する。雇用条件は、定期休暇は設定しているが、有給休暇のある経営は少なく、保険を整備しているのは少ない。賃金も、恒常的雇用者にしても時給制が大半であった。作業環境面では健康上の障害が指摘され、雇用依存経営の発展には条件・環境整備が避けられない。 3.施設野菜・花卉部門では、家族労力限界まで規模拡大した段階で雇用導入するケースが一般的で、雇用依存経営も家族経営的色彩を残している。雇用作業は、農業の自然的・産業的特性を考慮し、その類型化と標準化を進め、また労働能力管理面では、評価基準の工夫や窮屈な時間管理の回避により、雇用者の自発性と定着を図っている。経営主は生産管理、作業工程管理を担い、妻が人間関係管理的労働の中軸になるケースが多い。 4.大規模雇用経営を行うには、作業の機械化や作業内容を単純化し、雇用労力でも能率や品質の低下が生じない作業法及びこれを補う装置の開発が必要である。そのために栽培種類の整理、生態を把握し、それに合致した的確な作業行程を組み立て、各施設に責任者を置くなど、パートも能力のある人には仕事を任せ、時間給を上げ、慰安旅行や海外研修を行うなど、やりがいのある環境を作りだすことが重要である。 5.雇用中心経営では、経営の成長過程に対応する雇用者自身の雇用管理能力の向上が必要になっている。
|