平成5年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1.中国の都市・農村二元構造下の伝統的農村社会の改革・開放政策下での構造変容の諸特徴を統一的に把握し、地域類型比較を行うための理論的な枠組みを形成できた。ここでは「社区」(=中文。日本語では地域社会)が農村理解のキー概念で、これを出発点として農村の政治・経済・社会のモデル構成が出来る事が解った。それによって過剰労働力の析出のありかたと特質が理解できる。 2.また「社区」の性格把握に関しては農民の自立度と共同性、規制関係が家族・血縁・宗族的結合と規制及び国権的な行政的指令システムによる規制、市場的商品経済的規制の三者の関係が理解でき、地域的差異の中で「社区」全体の発展方向と各地域の到達段階を把握する事が出来る。即ち、「社区」は伝統的社会構造に基礎を持つが、社会主義段階の行政的システムによって再編強化され、今日市場経済化の中で強化される面と弱められる面とが現出している。これら1.、2.の問題については現在まとめ中である。 3.以上に基づいて、上海周辺と江蘇省南部の農村について、実地調査を行い、地域農村の政治・経済・社会構造と労働力移動に関する資料収集をした。いわゆる「蘇南 モデル」の経済社会構造的特徴を析出し、まとめの段階に入っている。 4.山東省については青島、煙台等の山東半島部(青島、煙台)農村の対外開放と市場化の進展下での農村経済社会構造の変化について、分析を継続中である。 5.上の3.4.に基づいて沿海地域の農村社会構造の転換の型を析出する予定である。
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