1.改革・開放政策実施までの「中国型社会主義」の特殊な「二元構造」を、(1)都市(=工業)と農村(=農業)との分断と相互の人為的結合(=行政指令型計画経済)、(2)戸籍制度による都市、農村住民の身分的分断、(3)職住一体の「単位社会」編制による封鎖的自足的社会(コミュニティー)形成、(4)ピラミッド型の位階制的官僚主義的支配構造の4要因から構成し、この構造の形成と転換の性格付けと歴史的変遷過程の整理を行った。 2.「二元構造」下の農業の再生産構造は市場経済進展過程で、極めて困難な条件に置かれ、国民経済の順調な発展を妨げる決定的要因となりつつある。工業と農業のバランスのとれた発展および農業と農民の再生産可能とする条件は単純に規制を取り外し、市場経済に委ねることではなくマクロ管理による適正な農業支援と補助が不可避である。この点では日本の戦後の農産物の市場および価格管理が学ばれるべきである。「二元構造」打破のための市場、価格管理の重要性について指摘した。 3.対外開放の進展下で国際地域間経済協力が発展し、他方が国境を越えて相互につながり合い、国家の枠組みが相対化し、他方の独自性・自立性が強化しつつある。中国の環渤海地域と挑戦半島、日本の西日本からなる環黄海地域が今後どの様な国際地域経済圏として発展するか、またその中でそれぞれの地域は何をなすべきかについて初歩的考察を行った。 4.農村経済構造と労働力移動については現在蘇南地域を中心にまとめを行っている。省を超えた広域的労働力移動が展開し、従来の「社区」や行政的境界を次第に堀り崩しつつある。しかし、地域における行政、経済、社会の「一体的構造」は依然として強固にあり、行財政制度のあり方、市場と価格管理のあり方などのマクロ的環境を整備することなしには、地域と地域、地域と外国など市場を巡る競争関係は益々激化し、その中で地方政府は「地域割拠的」動きをせざるを得ない。 5.沿海と内陸の経済社会構造の地域的比較は今回は出来なかった。今後の課題としたい。
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