ドイツの農業環境政策の柱は、EC共通の【.encircled1.】粗放化、【.encircled2.】休耕に、州独自のプログラムを加えたものである。本研究の主なフィールドのバーデン・ヴュルテンベルク州では、州独自の施策として【.encircled3.】ビオトープ・ネットワーク事業、【.encircled4.】水源税(Wasserpfennig)、【.encircled5.】市場緩和と農耕景観保全の調整金プログラム(MEKAプログラム)があり、これらを合わせた5本が、農業環境政策の柱である。 農業環境政策の原理は、環境に対する農業の否定的、肯定的外部効果の両側面にもとづいて構成される。多肥料、多農薬、多耕起、大型機械利用の集約的農業がもたらす地下水汚染、種の多様性の減少、土壌侵食、土壌圧縮などの否定的外部効果を減少させ、肯定的外部効果を増加させるプロセスを促進するのが、農業環境政策の本質である。 一般に環境政策の原理は、環境汚染の原因者が対策コストを負担する原因者原理に立つが、農業環境政策では、受益者が対策コストを負担する受益者原理に立つ。原因者の特定が困難なこと、自然的生産ゆえに汚染の発生プロセスの管理が困難なこと、農産物価格保証制度ではコストを需要者に転化できないことなどが理由である。汚染対策としての農業の粗放化施策により発生する経営の損失が対策コストであるが、このコストは農家の環境不使用の受益者としての国民から、直接所得補償の手法で農家に補填される。上述の農業環境政策がいずれも採用している調整金とは、この直接所得補償である。 ビオトープ・ネットワーク事業に関しては、昨秋の九州農業経済学会と今春の農村計画学会で口頭報告済み(予定)であり、水源税に関しては今春の日本農業経済学会で口頭報告予定であり、MEKAプログラムに関しては昨春の日本農業経済学会で口頭報告し、その後速報的な小論文を公刊した。バーデン・ヴュルテンベルク州とホーエンハイム大学からは資料面の支援を得ている。
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