本研究は、農業へのUターン就農者を含む新規参入者を新しい農業の担い手としての評価と位置づけ方法、及び定着させるための行政施策や地域的な支援システムの効果と在り方を究明することを目的とし、平成5年度と平成6年度に道内と府県で実態比較調査を行った。 この調査結果から新規参入については、従来の自然志向、あるいは牧歌的な農業への憧れからの新規参入と、企業的な感覚を持ち、職業としての農業を選択するという新規参入の二つのタイプがあり、後者は少ないが最近徐々に増加している。また、新規参入方法としては、第一に農家への直接参入がある。第二に酪農ヘルパー利用組合のヘルパーや、生産組織のオペレーターになって技術(資金)を獲得してから参入する。第三に農業生産法人の従業員や構成員になるなどの三つのパターンがみられる。いずれも地域農業に活力を与え、その担い手としての役割をもちつつある。これは、市町村の推進・支援システムの形成とも関連している。また、地域農業の基盤が強固な地域では、Uターン就農者が担い手の一人として「同化」し、新規作物を導入し生産組合を結成するなど地域農業の新たな発展の担い手となっている事例の成立も検出できた。 これらの定着条件としては、共通のものとして低利融資、減税措置や生活資金の援助なども含む行政や農業団体の助成制度、窓口相談機能の整備などの地域的な支援システムが必要である。土地利用型農業経営地帯の参入では、農繁期・労働ピーク時の労働支援組織・作業受託組織の形成や、土地を中心とする経営基盤の整備、都市生活者でも生活可能な生活しやすい環境整備などが必要である。労働集約型農業経営地帯の参入では、産地づくりや出荷組織等の生産組織へのスムースな加入可能条件の整備や、情報機能の整備と経営・技術指導などを必要としていることなどが明らかになった。
|