研究概要 |
本研究は、東南アジアにおける小規模家族経営の発展方向を実証的データによって検討し,一層の農業発展に資することを目的とし,3カ年計画で実施中のものである。とくに、技術革新・制度革新の実態分析に加え,個別経営の経営革新の必要性と可能性を解明することを狙っている。 本年度は,昨年度に実施した研究成果の一部を学術図書として英文にて刊行するとともに,土地制度と小作問題の変化に焦点を絞って,技術・経営変化の方向性について分析を行った。東南アジア4カ国10カ村の調査データを踏まえた分析結果によれば,土地保有形態や経営規模は新技術の導入には障害となっていないが,農業機械に代表される固定資本財の所有は経営規模に規定されていることが明らかになった。小作頻度関数の計測によって,土地所有構造,労賃収入に対する稲作所得,および経営規模の所得形成に対する貢献などの要因が稲作地帯における小作地率と関係していることが確認できた。小作料関数からは,収量水準,人口圧力および地主・小作関係が小作料水準の規定要因であることが解明された。とくに,血縁間小作契約の場合,小作料が高くなる傾向が認められ,東南アジアの経済発展による農民の意識変化,農村経済の変化との関連性を踏まえた新たな研究の必要性が明らかになった。 平成7年度では,以上の成果を発表するとともに,水田利用の多様化に関する分析を完成させ,今までの研究成果を全体としてとりまとめる計画である。
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